
土曜日に仕事が入ってしまったが、いずれにせよ、この週末は場所によっては警報が出るような雨で自転車は走れない。日曜日はずっと家にいて一冊読了。
『 湾 』 宮本輝
「戦後から令和へ、舞鶴湾で育まれた人々の豊かな営みを描く壮大で美しい、傑作長編小説」という帯の紹介文を見たら、今まで宮本輝の本を一冊も読んだことがなくても買わずにはいられなかった。

40歳で急逝した大学時代の親友Sが舞鶴出身で、何度か遊びに行った。小説に出てくる細かい地名まではわからないが、西舞鶴、東舞鶴、国道27号線、国道175号線、そして祇園、花見小路、上七軒、京都御苑、鴨川、詩仙堂など見慣れた地名がいっぱい散りばめられている。読み進めていくと、カリフォルニア大学サンディエゴ校まで出てくる。

戦前戦中のどさくさに「羊羹」と隠語で表現される「ぶつ」を大陸から舞鶴に大量に持ち帰り、後に莫大な金額となるが、それで豪遊するわけでもなく(アストンマーチンを乗り回し、京都御苑の東に高級マンションを買うくらい)、まじめに働き人生を全うする。小説の最後の方でも主人公自身がつぶやくが、イリーガルな「ぶつ」によって得た大金で自分自身が贅沢をするわけではない、かといってそれを困っている人々に役立てるわけでもない。宮本ファンには申し訳ないが、ストーリーとしてはそれほどおもしろいとは思わず、共感することもなかった。

ここまで「舞鶴」が舞台に、というより主役になっている小説は他にはないだろう。Sが読んだらどんな感想を述べるだろうか。そして、いつも蒲鉾を持たせてくれたSのお母さんはまだお元気だろうか。