いつ頃からかiPodとかいう小さい機械とイヤホンで音楽を聴くのが主流になり、今ではスマホでみんな聴いている。確かに通勤電車の中では便利であるが、それで本当にいい音楽が聴けるのだろうか。喜ばしいことに、最近、レコードの人気が復活しているらしい。子供の頃、親戚のおじさんに初めて買ってもらったレコードが「ウエストサイド物語」のサントラだったのは明確に覚えているが、自分で初めて買ったCDは覚えていない。アナログのレコードはデジタルのCDが再現できない音域まで記録されているらしいが、ぼくの耳では聴き分けることはできないだろう。今から再びレコードに戻るつもりはないが、あの針を置くときの緊張感とワクワク感は今でも覚えている。
昔、日本が元気だった頃、何度かオーディオブームがあった。ぼくのオーディオブームは高校生から大学生にかけてだったが、ちょうどレコードからCDへの移行期だった。CDはPhilipsとSONYの共同開発であり、録音可能時間についてPhilipsは60分を主張し、SONYは74分を主張した。当時のSONYの大賀副社長が音楽家であり、親交のあったカラヤンに意見を求めたら、自分が指揮するベートーベンの第九が全部入るようにして欲しいと言われたから74分になったという話は有名である。
記憶が曖昧だが、ぼくが最初に買った「オーディオ」は、マサチューセッツ工科大学のボーズ博士が研究開発したという謳い文句と意外なお手頃価格に惹かれたBOSEの101MMである。どうやってつないだか記憶にないが、ラジカセにつないでみて、その音質の変化に感動し、そのままオーディオにハマったような気がする。小遣いを貯めて、バイト料を貯めて、タニヤマ無線やヒエン堂など、高級単コンポを扱う店がいっぱいあった寺町四条の電気屋街を物色するのが楽しかった。BOSEの101の次に買ったのが、型番は忘れたがSONYのCDプレーヤーで、その頃はRichard ClaydermanやPaul Mauriatや中村由利子など、ピアノ中心のイージーリスニング系をよく聴いていた。
ぼくの第一次オーディオブームの完成形は、プリメインアンプがONKYOのIntegra A-817 RX、CDプレーヤーがKENWOODのDP-8020、スピーカーがONKYOのD-77XX、そしてカセットデッキがA&DのGX-Z7000だった。聴く音楽はJohn LewisのJ.S. Bach “Preludes and Fugues”のようなクラシックっぽいのからBill EvansやMiles Davis、ボーカルではAnita BakerやNancy Wilson など、ジャズが増えていく。
当時の録音はいうまでもなくカセットテープだが、好きな曲をひとつのカセットに編集したり、レンタルからダビングしたりしていたが、お気に入りのカセットはTDKのAR-Xだった。オリーブ色でノーマルポジションのAR-Xは自然でいい音を再生してくれていた。大人になって車に乗るようになったら、自分で編集したカセットをPIONEERのLonesome Car boyで聴きながら海岸線をドライブするのが夢だったが、カセットがCDやMDになり、Bluetoothになってしまった。
1992年、アメリカに留学することになり、渡米資金の足しにオーディア仲間だった友達に多くを買い取ってもらった。その後、CDラジカセやカーオーディオで音楽を聴くことはあったが、オーディオが趣味ですというほどではなかった。日本とアメリカを何度か行ったり来たりしながら、2000年に帰国した数年後、少し大きな家に住むようになったある日突然、ここにスピーカーを置けばいいかもねと昔のオーディオへの思いが蘇ってきた。といっても、今時の単コンポを新品で買い揃える資金力はないので、ネットオークションで懐かしいマシンを当時の1/10くらいの価格で買ったり、昔は高くて買えなかった上位グレードを買ったりして、スピーカー、アンプ、CDプレーヤー、カセットデッキを再び揃えてみた。ぼくの第2オーディオブームの到来である。
ネットオークションの中古、それも20数年前のモデルに多少の不安はあったが、出品者が良心的であったのか、しばらく問題なく使えて、オーディオライフを十分楽しむことができた。それでも、ONKYOのIntegra A-817とKENWOODのDP-8020は天寿を全うし、今はSANSUIとPIONEERに入れ替わっている。現在のシステムはアンプがSANSUIのAU-α707XR、スピーカーがONKYOのD-77XX、サブスピーカーはAA63が一時ワーゲンバスに載せていたドイツのCanton、カセットデッキがA&DのGX-Z7100EX、CDプレーヤーのみが新品で買ったPIONEERのPD-30AEとなっている。
ONKYOのD-77XXは、昔の仲間に20年振りくらいに突然電話して、もし今でも大事に使っているなら買い戻しさせて欲しいとお願いして快諾いただいた、つまり、自分が30数年前に買ったスピーカーそのものを使っている。さすがにウーハーのウレタン部分が経年劣化したので専門店で張り替えてもらい、今でもいい音を奏でている。あの時代は日本の各音響メーカーが全盛で、1本59,800円の激戦価格帯に自社の技術と威信をかけて価格以上のクオリティを投入し、598(ゴーキュッパ)戦争と言われていた。今ならこの価格でこのスピーカーは作れないだろう。
その他、周辺アクセサリーとして、壁コンセントをオヤイデのR-1とWPC-Zに交換し、電源タップはオヤイデのOCB-1DXを使っている。オーディオラックはヤマハのGTラックが欲しかったが絶版になっていたので、秋葉原のオーディオショップ(確かテレオンだったかな)でGTラックと同等品を謳うオリジナルラックを購入した。その後、GTラックが復刻したが、結果的にこのオリジナルラックが気に入っている。お茶の水のオーディオユニオンの制振シートをアンプの下とCDプレーヤーの下に敷き、スピーカーの下には山本音響の黒檀キューブベースを3点で置いている。スピーカーケーブルはコストパフォーマンス最高のカナレ。アンプとCDプレーヤーはBELDENでつないでいる。AdPower Sonicをバスレフポートに貼ってみたが、この効果はぼくの耳ではよくわからなかった。
専門家から見れば変な組み合わせであったり、改善の余地は大いにあるかもしれない、宝くじが当たれば、McIntoshやMark LevinsonやJBLなども試してみたい気もする。しかし、ぼくは今のシステムで、目を閉じるとVillage VanguardやSMOKEのステージが立体的に出現するような臨場感で好きな音楽を十二分に楽しんでいる。
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