相変わらず雨が続いている。最後に出撃したのは8月22日。第7期(7月26日以降)はまだ271kmしか走っていない。第6期は同じ時期にすでに430kmを走り、第5期は469kmを走っている。8月は連休もあり、気候的にもガンガン走れるはずなのに残念であるが、必然的に読書の時間が多くなる。あまりに積ん読が多く、何がなんだかわからなくなってきたが、今日、一冊読み終えた。

『LA フード・ダイアリー』 三浦哲哉 講談社文庫
20世紀最後の数年を Los Angeles で過ごしたぼくとしては手に取らずにはいられなかった。映画を通じて比較芸術を研究する大学教授が1年間のサバティカル(サボティカルという言い方もあるが)を映画の都 LA で過ごし、食を通じて見た LA を論じている。

日本とちがって LA の食べ物には季節感がないとか刺身にできる新鮮な魚を手に入れるのが難しいなど、当然のことはさておき、多様性や画一性など、学者らしいこねくり回した議論はぼくには意味不明である。しかし、ぼくが住んでいたトーランス(ヤオハンがあって重宝した)、サンタモニカ、ヴェニスビーチ、ドジャースタジアム、ステープルズセンター、メルローズ・アヴェニューなどなど、見覚えのある地名が懐かしく、料理の理屈はよくわからないが楽しく読み進めることができた。

牛と映画の話、BBQの温度の話、ケチャップの話は「なるほど~」であり、ヴェニスビーチのお友達の書棚で見つけた谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に関する記述も興味深い。「むしろ、故郷から遠く離れ、別の生活空間に慣れることによってこそ、日本のモノの美は『エキゾティシズム』の力を得て、一層、異様な魅力を放つということではないか」。なるほど、ドジャースタジアムで NOMO を応援しながら食べるYOSHINOYA の Beef Bowl が日本の吉野家で食べる牛丼より魅力的だったのはそういうことか(いや、違うか!?)。

ぼくのLA時代でもっとも印象的なのはMalibuの海岸線のお洒落なレストラン。名前も思い出せないが、なんでも検索できる便利な時代、おそらく GEOFFREY’S だと思う。夕暮れ時にPCH(Pacific Coast Highway)を走って、夕焼けに染まる太平洋を眺めながら、マグロのカルパッチョ(みたいなもの?)を食べた、と言っても2~3回くらいだが。

Malibu は正確には LA county ではないので、この本に出てこなくて当然だが、ぼくが知ってるお店は全然出てこないなぁと読み進めていると、ひとつだけ、懐かしいお店が紹介されている。
Pink’s Hot Dog
N. La Brea Ave にある Pink’s はピンク夫妻が1939年に屋台で始めて、その後この地に店を構え、今でも家族で経営しているらしい。近くの Gardner Street Elementary School に通っていたマイケル・ジャクソンもお小遣いを握りしめて食べに来ていたという。ぼくも何度か車を走らせて食べに行ったが、残念ながら写真はない。やっと携帯電話が出始めた頃で、もちろんデジタルカメラなんかついていない時代である。

懐かしくて検索してみたら、2026年中に東京に進出し、2030年までに首都圏に20店舗を目指す、という情報がヒットした。家族経営からどこかの資本に入ったのだろうか。複雑な気持ちである。クリスピークリームドーナツのように、しばらく長蛇の列が予想されるが、東京で普通に食べられる Pink’s ってどうなんだろう。へその曲がった天邪鬼のぼくは敢えて食べに行くことはしないだろう。Pink’s はあそこで食べるから Pink’s なのであって、想い出の中だけで良いような気がする。
と言いつつ、Pink’s を連想させるアメリカンなソーセージが食べたくなると、日本のスーパーでも最近売るようになった Johnsonville を買ってしまうのである。美味いよ!!
