今週は百合の花が満開になった。何もお手入れなんかしていないのに毎年ちゃんと咲いてくれる。そして、今日は気温30度を超す絶好のサイクリング日和であるが、また口唇ヘルペスができてしまった。いつも同じところである。自覚するところでは身体がしんどいわけでもなく、熱があるわけでもなく、青空を見上げてそわそわしているが、疲れが溜まっているからゆっくりしなさいという神のお告げと思い、この週末は音楽鑑賞・読書三昧と割り切ることにした。

読書のお供に買っておいた湯島の花月のかりん糖と一保堂のお茶を淹れてまず Miles Davis の “SOMEDAY MY PRINCE WILL COME” を聴きながら、近藤史恵さんの最新刊「たまごの旅人」を読了。PRINCEといえば、数年前に都内のある自転車ショップがPINARELLO PRINCEの真っ白なフレームを格安で売りに出していた。ONDAフォークのうねうねがまだかっこいい時代のPRINCEである。しかも、「ビチ」なぼくのサイズ。これは買うしかないとあれこれやり繰りをして、仕事を午後半休にしてショップを訪れたが、残念ながら前日の夜に常連客がすでに買ってしまった後だった。

しかし、人生は何事も塞翁が馬である。それから暫くして今の COLNAGO C59 に巡り合い購入することができた。慌てて PRINCE を買っていれば、大本命の C59 を買うことはできなかった。PINARELLO(創業1952年)がいいフレームであることは言うまでもない。COLNAGO(1954年) と De Rosa(1953)に並ぶ Big 3 である。しかし、PINARELLO が日本でもブレイクするのは1991~95年にミゲル・インデュラインがツールドフランス総合5連覇をしてからではないだろうか。最近の江戸川や荒川のサイクリングロードで最も多く見かけるのは TREK だが、少し前までは圧倒的に PINARELLO が多かった。インデュラインの功績は大きいがクリストファー・フルームが PINARELLO DOGMA で2013年、16年、17年のツールドフランスを総合優勝したことが要因であろう。

今の日本では PINARELLO のほうがよく知られているのか、COLNAGO を見かけることは少ない。しかも、今となっては4つ前のフラッグシップの C59 を見かけることは皆無であり、ぼく以外にC59を見たことは一度しかない。C59 以降のフラッグシップも所有する人で結局 C59 が一番良かったという人も多い。ぼくのところに PRINCE は来なかったけど、C59 が来てくれたのは天啓である。

さて、近藤史恵さんの「たまごの旅人」である。「サクリファイス」をはじめとする自転車ロードレース小説は最高に面白いし、本職であるミステリーの「ホテル・ピーベリー」も面白かった。「ときどき旅に出るカフェ」や「スーツケースの半分は」など、旅に関する小説も期待を裏切らない。今回は海外旅行の新米添乗員さんのお話である。ロサンゼルスで現地ツアーガイドをやっていたぼくとしては共感できるところが多く面白く読み終えた。