八坂神社が背景に見える表紙など、なんとなく気にはなっていたが、今まで買って読むことはなかった万城目学さんの本を今回の帰京中に丸善で買って一気に読んだ。
「8月の御所グラウンド」
このタイトルは抵抗できない、買わざるを得ない。
「御所」とは明治維新まで天皇陛下がお住まいだった皇居である。歴史的には平安遷都以降、何度か変遷はあるようだが、現在に残る「御所」は、北は今出川通から南は丸太町通、東は寺町通から西は烏丸通に囲まれた周囲4kmの広大なエリアである。正式には「御苑」と呼ばれ、御苑の中に仙洞御所や大宮御所などがあるのだが、ぼくたちは全部まとめて「御所」と呼んでいる。
現役時代の御所は、桂宮邸や有栖川宮邸、近衛邸、鷹司邸、中山邸など、多くの宮家公家屋敷が並んでいたが、陛下が江戸にお移りになって以降はそれらも江戸に移り、空いたスペースが市民憩いの公園となった。
草野球ができる広いグラウンドが北と真ん中と南に3つあり、ぼくは高校の仲間と一緒に草野球チームを結成してこの「御所グラウンド」で主にソフトボールをやっていた。野球が上手い連中が集まったというより、仲のいい連中が集まったのでソフトボールのほうがみんなでワイワイと楽しめた。
真ん中のグラウンドが一番広かったが、2005年に京都迎賓館ができてしまった。草野球を楽しんでいた者としては残念ではあるが、数寄屋造や庭園、漆や西陣織など、日本の伝統技能の粋を集めたそうなので、それを形として継承し、世界に発信するいう意味では良しとするか。
当時は篠塚選手の大ファンだったぼくは背番号6をもらって、ZETTのセカンド用硬式グローブをもってサードを守っていた。本当はセカンドかショートのダブルプレーを取るポジションをやりたかったが、ソフトボールではサードが一番強烈な打球が飛んでくるのでサードを仰せつかっていた。今となっては誰も信じてくれないが、相手チームに「甲子園経験者」と噂されるくらい守備の名手だったのだ。野球部の経験どころか、近所の公園で遊ぶ程度の野球経験しかないにもかかわらず。
「8月の御所グラウンド」を読みながらあの頃が無性に懐かしくなり、実際の「御所グラウンド」(北)に何十年振りかに行ってみた。地元の女子高生だろうか、楽しそうに練習していたので、飛び入り参加をお願いしそうになったが、おっさんチームならまだしも、女子高生チームだったのでさすがに自重した。
ストーリーとしては日本版「Field of Dreams」といったところか。一緒に収められている女子駅伝をテーマにした短編も合わせて、「京都が生んだやさしい奇跡」だそうだ。
#八月の御所グラウンド #万城目学