Bill Evans “SOME OTHER TIME” ~ The Lost Session from the Black Forest

穏やかな土曜日となり今の季節としては絶好のサイクリング日和だったが、午前中に都内で用事があり、その帰りに御茶ノ水の disk union Jazz TOKYO に立ち寄ってみたら、探していたアルバムを見つけた。

1968年6月20日、ぼくが産まれる約1か月前にドイツで録音され、その後、ずっと忘れられていた貴重な音源が2枚のCDになって2016年にリリースされた。ファンのあいだでは「お城のエヴァンス」と呼ばれるアルバム「Bill Evans at The Montreux Jazz Festival」が録音された5日後の6月20日、Bill Evans と Eddie Gomez (bass) と Jack Dejohnette (drums) が南ドイツの小さな都市フィリンゲンにあるMPSスタジオで演奏したが、当時の専属契約の関係などですぐにはアルバムにして販売することができなかった。

MPSとは “Musikproduktion Schwarzwald” つまり黒い森の音楽プロダクションであり、ドイツのラジオメーカーの役員でもあった Hans Georg Brunner-Schwer (HGBS) が立ち上げたドイツ唯一のジャズレーベルである。HGBS自身が音楽エンジニアでもあり、Duke Ellington や Oscar Peterson が何度も録音していることからのその音質はお墨付きであろう。

今から50年以上も昔の録音とは思えない立体感は驚きであるが、逆に、今のように何度も録音してミキシングで「いいとこ録り」するのではなく、一発録りのほうが各プレイヤーの位置関係が明確に記録されるのかもしれない。とくに右から聞こえてくるベースの一音ずつに、まるで Eddie Gomez の爪の音まで聴こえてきそうである。