読了
予報通り朝から激しい雨が降っている。今日はどこにも行かないと決め込んでいた。郵便受けの新聞を取って、玄関先のメダカに餌をやった以外は一歩も外に出なかった。朝から読み始めた文庫本は、一日で一気に読み終えた。近藤史恵さんの自転車ロードレースシリーズは一作目の「サクリファイス」に始まり、「エデン」「サヴァイブ」「キアズマ」とすべて読んできた。最初に自転車雑誌でサクリファイスの単行本が紹介されたときは、ロードレーサーにも乗ったことがないのにロードレースの小説なんか書けるのか!?という偏見が邪魔をして読むことはなかったが、そのような偏見は良くないと思って文庫になったのを機に読んでみた。
面白い!!ロードレースの駆け引きが見事に描写され、そのなかに近藤さんの本職であるミステリーが巧妙に練り込まれている。続く作品もすべて期待を裏切らない傑作である。単行本で出ていたのに気が付かず、先日、文庫本を見つけて買った「スティグマータ」も読者をグイグイ引き込み、最後まで一気に読ませるストーリー展開はすごい。ミステリーのネタバレになってしまうので、これからスティグマータを読むつもりの人は以下は読まないで欲しい。
ツール・ド・フランスを3度も優勝(小説のなかでは明確ではないが、ステージ優勝3度ではなく総合優勝3度という意味だろう)したメネンコはドーピングで追放されたが、5年のブランクを経て復帰した。メネンコの狙いは総合優勝ではなく、マイヨ・ジョーヌを着ながら途中で悲劇のヒーローとしてリタイアすることによりダーティなイメージを払拭すること。しかし、読者として解せないのは、それならなぜメネンコはチカにアルギが自分に変なことをしないように見張るようわざわざ依頼するのだろうか。ゴール直後、メネンコをナイフで刺そうとしたウィルソンを止めようとしたチカが刺されてしまう。山岳コースを越えてゴールスプリントで2位に入った直後のチカがレーサーシューズを履いたままナイフを持ったウィルソンに俊敏に駆け寄って止めに入るのは不可能だろう。
そういう細かい突っ込みはいいとしても、エンディングはズルいと思う。チカがサポートするエースのニコラが総合優勝するのかしないのか、ハッキリさせずに終わる。結論を明確にしないで、読者に想像させるのもひとつの手法であろうが、この終わり方は読者をガッカリさせる。ニコラが勝ったのか負けたのか、ハッキリさせるべきだたろう。あるいは、続編を買わせるための作戦か。次の作品はニコラが総合優勝したか否かの最終ステージから始まるのだろうか。それはそれで楽しみだが・・・。
最後にもうひとつ。走りながらウィンドブレーカーを着ることはぼくにでもできるが、シューズカバーはいくらプロでも走りながらはできないと思うのだがどうだろう。実際のレース映像等々でそのようなシーンをご覧になったのだろうか。
何はともあれ、次の作品が楽しみだ。